『田園の詩』NO.98 「老舗の心意気」(1999.6.1)


 今年は豆類の成育が殊のほか良くて、スナックエンドウが只今最盛期、背丈より伸びた
グリーンピースは鈴なりで収穫寸前といったところです。

 おまけに、初めて育てたソラマメも大きく膨らんできました。このソラマメはビールのCM
で男優が美味しそうに食べているのを見て、「我々も…」と昨年の秋に畑に種を蒔いたもの
です。

 さて、大豊作のスナックエンドウですが、これはサヤごと湯がいてそのまま食べられる手軽
で美味しい豆です。毎日、沢山収穫できるので、知人に押し売り的な「お裾分け」をさせても
らっています。

 しかし、これが商売物となると、そう簡単に人に差し上げる訳にはいきません。私も筆職人
で、工房に尋ねて来られた方に直接筆の販売をしていますが、沢山買われた方や遠来の方
には、つい商売物の筆を何本か差し上げたりします。たまに褒められることもありますが、
大抵は後で女房に叱られます。

 ところが、大胆にも自家の商品を大勢の人にプレゼントする知人が2組います。一組はお隣
杵築市の老舗のお茶やさんです。毎年、八十八夜のその日に新茶が我が家に届きます。

 お礼の電話をすると「美味しい時に飲んで戴きたくて…」と若奥さんの気持ちの良い言葉が
返って来ます。この新茶のプレゼント、並半端な数ではなさそうです。


      
    合併して杵築市となった我が市の中心部、市役所の右隣にある趣のあるお店です。
     「相伝260余年、伝統の心と技を受け継ぐ茶舗」です。

         
 ホームページはこちらです⇒≪お茶処 とまや≫(←クリック)

 もう一組は、これもお隣日出町の≪城下カレイ≫の老舗の夫婦です。旬のこの時期になると
「食べにお出で」という電話がかかります。

 その宴会の賑やかなこと。気心の知れた20数組の夫婦(私達が1番若年)が何の気兼ね
もなく思う存分料理を楽しみます。その歓談の中に入ってにこやかな笑顔のご主人と女将
さん。忘れ得ぬ一日を今年も戴きました。

 今時、採算を度外視してこんな商売をしてたら…と心配する方もいるでしょう。しかし、
人との交わりを何より大切にする老舗を私はいとおしく思います。

 まだ駆け出しの筆工房『楽々堂』も大先輩の姿を見習いたいものです。
                         (住職・筆工)

                      【田園の詩NO.】 【トップページ】